とあるケアマネジャーのたわごと🌈

これまでの経験を基にした介護に関する様々な情報、日々の業務を通して感じたことが主な内容です。大変な職業でありますが、長く仕事を続けられる参考に活用して頂ければ幸いです。

個人情報保護の壁

たまにはゆっくりと終末の夜を過ごしたく、今日は夜更かししております。

しかし、ただぼーっとしているのではなく、うまく文章にできないですが、書きたいことが沢山あるのでパソコンをカチャカチャやっています。

今回は『個人情報保護の壁』というタイトルです。決して個人情報保護を悪く言っているのではありません。もちろん必要なことであり、世間一般では個人情報保護法によって個人の情報が守られ、この業界でも職業法において守秘義務が課せられており、利用者さんの情報が守られていることになります。

しかし、本当に必要としている時、例えば人命が関わるような時、、、なんとかならないのかな、と思ったことが過去にございましたので紹介致します。

 

利用者Aさん。

脳梗塞で倒れ救急搬送されました。そのまま入院となったのですが、意識が不鮮明な状態が続いておられました。入院して暫く経つと、経口からの食事摂取が困難な状態となり、胃ろうの造設が検討されるようになったのです。ご本人の意思確認は極めて難しい状態。独居で身寄りの無いAさんでしたので、病院からは「ケアマネさん、胃ろうをつくらないと難しいけど、どうしますか?」と求められたのでした。

もちろん、ケアマネジャーとして医療同意はできません。しかし「つくらないで良いです」という判断もできません。

そこで、まずできることとして、親族を探してみようと考えたのです。探す為の材料はいくつかあったので、もしかすると見つかるかも知れないという僅かな希望は持っておりました。

 

①現住所地の担当ケースワーカー

生活保護を受けられていたので、ケースワーカーに問い合わせてみました。事情を説明すると、、、「こちらで把握できている身内の方はいないです」とのこと。まあ、正直なところ、ここにはあまり期待はしておりませんでした。

 

②故郷の役所

Aさんの本籍地は分かっておりましたので、その住所地にある役所へ電話連絡をして事情を説明して問い合わせてみました。すると、「個人情報なのでおこたえできません」との回答。

 「生死に関わる問題なんです」

と言ってみるも、個人情報保護の壁は厚く親族の情報は得られませんでした。

 

③僅かな情報

Aさんがお元気な頃、ヘルパーさんがAさんより、あるお話を聞いたことがあるということでした。それは、故郷よりこちらへ出てきている親族が〇〇(近隣の役所)で働いているという情報を聞いたということ。比較的、珍しい苗字だったので期待を胸に問い合わせてみることにしました。しかし、事情を説明すると、、、「個人情報なので」と、やはり個人情報の壁は厚かった。

ということで、どうしたものかと頭を悩ませていた時、一つの名案が思い付いたのでした。それは、インターネットのマップでAさんの本籍地を調べ、その近所にあるお寺に電話をしてみようというものでした。お寺ならば檀家さんで親族にあたることができるかも知れないと考えたのです。そして、人の生命に関わることなのでお坊さんならば快く協力してくれるはずと思いました。

意を決して電話をすると「そういうことならば同じ苗字の人が近所にいるから聞いてみてあげよう」という感じで、疑うことなくご協力して下さることとなりました。

数日後、住職へ連絡をしてみると「代が変わってしまって、Aさんのことを分かる人は誰もいなかったです」ということでした。ご親切な対応に深く感謝をお伝えし、そして親族探しはここで終了となりました。

結局、主治医とお話をした結果、誰の意思も確認できない状態で、胃ろうを造設せずに亡くなってしまうという選択はできず、今後の回復、そして経口摂取復活の可能性を信じて胃ろうを造設することになったのでした。

その後、Aさんは胃ろうによる栄養補給が可能となり、1年以上は入院しながら過ごされたでした。

この件について、人の生死が関わっている状態で、どこまで個人情報保護が優先されるのか、ということを考えさせられました。もちろん、こちらの立場と利用者さんの関係性について、信頼できる第三者に説明して頂くことが必要であると思います。