『おひとりさまの老後』を読んで
平成から令和へと新たな時代を迎えました。世間は10連休の賑わいを見せておりますが、介護業界では常に介護を必要としている方がいらっしゃる以上、人手が不足する状況でも皆で協力し合って出勤をしている状況であります。
さて、今回は上野千鶴子さんの『おひとりさまの老後』の感想について、日頃の業務と関連付けて書いてみました。上野さんと言えば、先日の東京大学入学式での祝辞が話題となりましたね。私もHPで全文を拝読しましたが、とても重要な内容だと感じました。
この本を読んだ理由
以前の記事にも書いたように、私がケアマネジャーとして関わっている利用者さんには単身者が非常に多いのです。
単身者の方々は世間から非常にネガティブな印象を持たれているように感じています。
「寂しそう」
「何かあった時に大変」などなど。
しかし、その多くがどれも漠然としたイメージのように思います。では、家族と同居している方は幸せなのでしょうか?一概にそうとも言えないんですよね。それはそれで、色々なストレスを抱えていることもありますし、介護度が高くなり、本人の望まぬ施設入所を家族が決めるといったこともあるのが実際のところ。「介護負担」というやつですね。
この『おひとりさまの老後』はひとりで老後を過ごすためのノウハウを様々な視点から考察された一冊です。私が読んでみようと思った理由は単純明快。世間に多く出回っている単身高齢者を取り上げた書籍よりも、ひとりで迎える老後を前向きに捉えているような印象を受けたからです。
最期について
この本における「おひとりさま」の対象は女性です。生涯未婚で過ごす方以外でも結局は離婚や死別でおひとりさまになる可能性は非常に高いという内容の一章から始まります。その発想が良いですよね。結局は皆んな一緒なんだから寂しくない!というような感じですかね?
女性は男性より平均寿命が長いことから、これは納得です。この再びやって来た「シングルアゲイン」をどう楽しく過ごすか。その為の住居、交友関係、お金、介護、そして最期に至るまで事例を交えながら記されています。
その中でも私が最も興味深かったのは「最期」に関すること。ひとりになって皆んなが口を揃えて言う不安は「孤独死」だ。最近では「孤立死」と表現される方が一般的かも知れませんね。
私はまだ死を意識するには若過ぎるかも知れませんが、それでもどこかで「死んでしまったら何も感じないし、その後のことは知る由もない」と思うところがあります。確かに私の関わる多くの単身高齢者が気にしているのは、誰かに迷惑をかけてしまうのではないかということ。その誰かは親族や近所の人だったり、家主だったり、友人だったり。
このことに関して上野さんは、たくさんの孤独死の事例経験がある東京都観察医務院の小島原將直さんの以下のアドバイスを参考にしています。
ひとりで死ぬのはぜんぜんオーライ、ただ、あとのひとの始末を考えて早く発見してもらうような手配だけはしておきなさいね
ひとりで死ぬことは、決して悪いことではないし、そもそもひとり暮らしをしてきた人が最期の瞬間だけ親族に見守られながら息を引き取ることこそ不自然なことかも知れません。
まとめ
私は特に最期をどう迎えるかということに興味を持ちました。それが日頃の支援において大きな課題となることが多い為です。
私が関わっているひとりで暮らしの高齢者で、圧倒的に多いのは自分の最期について意識していない方々。逆に家族と暮らしている方は「家族に迷惑をかけないように」と、いろいろ考えている傾向が見られるように思います。
ネガティブなイメージが強いのが現実ですが、ある意味ではおひとりさまの方が気楽で良いような気もします。ただ、その為には準備は必要です。そのヒントがこの『おひとりさまの老後』に詰まっているように思いました。しかし、男性がおひとりさまとなった場合、楽しく過ごしていけるのだろうか……自分自身にその不安を感じております。